自分で管理は危険 贈与で争族回避
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- 2015-09-29
「110万円控除」活用せよ!
贈与とは、自分の財産を無償で相手方に「あげる」意志を示し、相手方が「もらう」ことを承諾することによって成立する契約です。ここでは、贈与税の仕組み、相続対策として効果的な「生前贈与」のポイント、そして税制上有利に財産を移転できる特例を紹介します。
暦年贈与課税
図① 贈与税額早見表(暦年課税) 贈与税の課税方法は2つあります。1つは「暦年課税」で、1月1日から12月31日までの一年間にもらった財産を対象とします。もう一つが「相続時精算課税」で、20歳以上の者が60歳以上の父母又は祖父母から贈与を受けた場合に、贈与する人ごとに累計2500万円まで贈与を受けた時点では非課税とし、相続時に贈与時点の価額で相続財産に加算して相続税を計算し精算するものです。
暦年贈与課税制度には110万円の基礎控除があり、これを活用して贈与を行うことは相続税対策として大変有効です。ただし、基礎控除を超えた額のうち200万円までは10%の贈与税が課せられるなど、贈与を受けた額が大きくなるにつれて税率も高くなるので注意が必要です。多少贈与税を払ってでもいいから早めに財産を贈与しておきたいという場合には、税理士に相続税のシミュレーションを依頼し、相続税の実効税率(実際に負担する税額の所得金額に対する割合)を計算してもらうといいでしょう。(図①参照)
例えば、仮に相続税の実効税率が20%だとして、500万円の贈与を受けたケースを考えると、贈与税額が49万円で実効税率は9.8%となります。将来相続税を負担するより、今贈与を受けておいた方が得だということになるのです。あくまで計算上の話ですが、毎年100万円を4人の子どもに10年間贈与をした場合には、100万円×4人×10年で4000万円の財産を課税なく移転することができます。ちなみに、相続開始前3年以内に相続または遺贈により財産を取得した者が贈与を受けた額は相続税の計算対象となるため、早めの相続税対策が得策です。
名義預金に注意
この110万円の基礎控除を利用して配偶者、子、孫などに預金を贈与している高齢者の方は多いでしょう。この場合、注意したいのは贈与をした預金は、配偶者や子、孫が自由に使える状態になっているかどうかという点です。預金通帳の名義を配偶者や子、孫にしただけで通帳、銀行印などを贈与者本人が管理していた場合には、税務署は配偶者や子、孫の預金とは認めず贈与者本人の財産、つまり相続財産と認定します。また、配偶者が所得がないのに多額の預貯金等を持っている場合には、税務署は夫の財産が配偶者名義の預金として管理されているにすぎないと判断し、相続財産と認定することもあります。
これらのトラブルは、贈与契約書を作成し、配偶者や子、孫が普段使用している預金口座に贈与資金を振り込むことにより防止することができます。あえて110万円の基礎控除以上の預金贈与を実行し、配偶者や子、孫に贈与税の税務申告を行わせることにより、贈与の証拠を残すのも一つの手です。
監修:税理士・宮城秀敏
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